>>No.154

   椎名 桔平

 原作は大ベストセラーとなり、テレビドラマ化もされた盲導犬の物語、「クイール」が映画化され、いよいよ3月13日からピカデリーほかで公開されます。深い人物描写に定評がある崔洋一監督が手がけ、盲導犬クイールと重要な役割を果たす訓練士役を、今一番輝いている椎名桔平が演じています。椎名さんに映画の見どころを伺いました。

プロフィール

 1964年三重県生まれ。93年に「ヌードの夜」で注目を集める。以後、「GONIN」(95)「溺れる魚」(01)「化粧師」(02)「スパイ・ゾルゲ」(03)「嗤う伊右衛門」(04)など多数の話題作に出演。「金融腐蝕列島 呪縛」(99)では、キネマ旬報賞や日本アカデミー賞など数々の映画賞を受賞。今後は主演映画の「約三十の嘘」が12月に公開予定。1月にはパルコ劇場30周年記念公演「ベント」に主演した。


 この映画に関しては「クイール」の原作をすでに読んでいました。自分でも盲導犬と同じ種類の犬を飼っていたこと、そしてなんといっても、崔洋一監督とがっちり組んで仕事ができることが大きな魅力でしたね。
 崔監督は、男の目線で心情を表現されるのがうまく、私が20代のころ所属していた劇団の先輩格。脚本を見る前から、すべてを預けてもまちがいがない、という強い信頼感があり、自分の役、脚本を信じてやっていけばだいじょうぶ、と迷いはありませんでした。
 私は、多和田訓練士の役。役作りは、私たちの仕事のなかで、ワクワクするだいご味なんです。今回は多和田さんがまだ現役で仕事をしていらっしゃるので、少々やりにくい部分もありました(笑い)。でも多和田さんがコーディネーターとして2カ月近く現場に関わられるうち、犬に対する接し方、歩き方、呼び方、無意識な行動ですら、何かのためにしているんだと気が付いたんです。それを仕事場で観察できるのは大きな利点となり、多和田さんの人間の奥行き、しぐさ、声の出し方、どういうトーンで表現するか、などを吸収できて役作りにものすごく役に立ちました。


 訓練センターの犬は、とても幸せそうで、楽しんでいるように見えます。訓練も叱るのではなく、常に「グッド、グッド いいぞ」とほめる。犬は仕事をしていても楽しいから尻尾を振るんです。 映画でも、私は役者としての演技だけではなく、犬の尻尾を振らせるようにあやしてハッピーにさせなきゃいけない。いいタイミングでほめ、人といるのが楽しいと感じてもらう。まるで腹話術師のように「グッド、グッド」と言いながら本番中にクイールの演出もするのは日常茶飯事でした(笑い)。
 監督は犬のいい表情を撮るためにじっと粘り、もともとせっかちな方との噂もありましたが、「人生観が変わるくらい」待ち、回したフイルムの使用量も通常の5倍、松竹始まって以来だったとか。完成試写を見て、クイールが盲導犬の一生を演じきり、誰もかなわない芝居をしているので、いい仕事をしたなと思いましたし、その表情を引き出した崔監督の見事さに驚きました。
 多和田さんによれば、クイールは特別な犬ではなかった。今まで盲導犬として何百匹世に出してきて、もっと優秀な犬はいっぱいいたと。彼は柔和な顔をしてみえますが、半年間訓練をしても適性でなければ絶対に盲導犬にはしない。

 この映画のなかで訓練士というのは、クイールという盲導犬のリアリティーを増すための存在ではないかと。そのために私の振る舞いがどこまでリアリティーがあるか、が問われていると思いました。みなさんにこの映画を見ていただき、どういう思いをしてもらえるかが楽しみです。
 私は役者の仕事が面白そうだとプロダクションに入ったのが21歳のとき。以来18年、今が一番旬かな(笑い)。役者というのは、自分とは違ういろいろな人生が生きられるし、一つの役を掘り下げるのも面白い。たとえつらくとも人が魅力的に見える、そんな役が好きですし、これからもいろんな役柄に挑戦していきたいですね。

 

 

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